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<写真の無断転載は固くお断りします> 「Trust nobody.If you trust,you lose.」 これは二週間のインド旅行のうち、半分の日程を共に過ごした運転手氏が、 ことあるごとに、僕に言った言葉だ。 『誰も信じるな。信じれば、失う。』 何だかハードボイルドの映画みたいで格好いいじゃないか。 気に入ったぜ、相棒。 ジャイプルからアグラーへ向かう道中、 "インドが誇る" HM社製の4ドアセダンは、エンジンルームのあたりから突然、 バタバタという音がしたかと思うと、水温計の針がみるみる上昇しはじめた。 ドライバー氏はそれからしばらく騙し騙し車を走らせ、次の村に差し掛かったところで 車を路肩に寄せ、ボンネットを開いた。予想通り、ファンベルトが千切れていた。 「ドン・ウォーリー。ベルトのスペアは2本も積んである」 彼が修理をする様子をコンパクトカメラで撮っていると、 子供達が集まってきた。小学校の高学年ぐらいの男の子数人、 身なりは皆一様にみすぼらしく、貧困層の子供達であることは明らかだ。 彼等は僕のカメラの液晶画面を興味深そうに覗き込んでいるので、 よく見えるように、画面を彼等のほうへ向けてやると、彼等の顔がぱっと輝いた。 可愛いじゃないか。カメラを間近で見ることなど滅多にないのだろう。 そうだ、君らを撮ってあげよう。そっちに並んでごらん。 などとやっていると、運転手氏が修理をしながら強い調子で言った。 「ダメ、ダメ!」 こんな素朴な子供達が悪さをするとでも言うのか? ベトナムでスリに遭った経験以来、コンパクトカメラは 長いストラップでウエストポーチに括り付けてある。 仮に彼等が盗もうとしても、簡単にはいかないはずだ。 彼等の一人が、そのカメラを指差して、 「ルピー?」と言った。ルピーはインドの通貨単位。 つまり「それはいくらするのか」と訊きたいらしい。 「さあ・・・確かテン・サウザン・ルピー以上だ。わかる?」 英語はまったく分からないらしい。 次に僕の腕時計を指してまた「ルピー?」と訊く。 これはスイス製だ、いっぱいいっぱいルピーだよ。 サングラス?これは安い。 途上国の人が、豊かな国から来た我々の、 ピカピカ光る持ち物に興味を示すことは珍しくない。 そして彼等は値段を訊くのが好きだ。 答えたところでわかりもしないのに。 今度は、シャツの胸元に挟んであった、ボールペンを指す。 これか?これは買ったんじゃなくてどこかで貰ったんだよ・・・ 僕がペンをはずして指でつまんで見せると、 近くにいた子供がそれを手にとって、自分の掌に落書きを始めた。 「RYU!ダメ!」 運転手氏がまた、険しい顔をして言った。 修理は難航しているようだ。そのせいで機嫌が悪いのか? 「ダメ!」 はいはい・・・ほら、君達もそろそろ帰りなさい。 キミ、ペンを返してよ。あ、・・こら、泥棒! 奴はペンを持ったまま、走って逃げてしまった。 「RYU、だから言ったろう!?車の中に戻って座ってろ!」 わかったよ・・・。車のバックシートに座ってドアを閉めると、 子供達が車を取り囲んで騒ぎ出した。 "出て来い、もっと何かをくれ"というのだ。 そのうち、さっきペンを盗んだ少年までが戻ってきて、 ドアのノブをつかんでガチャガチャやっている。 「やめなさい!ゴー・ホーム!」 すると彼等は僕の言葉を真似して、 「ゴーホーム!ゴーホーム」と、おちょくったふうに言い出した。 運転手氏は難航する修理に気が立っているらしいのと、 開いたボンネットに遮られて状況がよく見えていないらしいのと、 さらに"お前が奴等を相手にするからそんなことになる"という気持ちもあるらしく、 肝心な時になって、わざと知らん顔を決め込んでいる。 一人が運転席側に回って、半開きになっている窓から手を差し込んで、 ダッシュボードに置かれている運転手氏の携帯に手を伸ばしたので、 僕は慌てて後部座席から身を乗り出してノブを回し、窓を閉めた。 子供だと思って、人が甘い顔をしていたからといって、 増長するにも限度を超えている。 本当に頭に来た。 ドアを勢い良く開いて一気に車外へ出た。 鬼のような形相で向かってくる大男を見て 子供達はクモの子を散らしたように逃げ出す。 ペンを盗んだ少年を目掛けて大股で何歩か追いかける。 こちらが本気で怒っていることを分からせなくてはならない。 僕の怒りが伝わったらしく、子供達は遠くまで全速力で走って逃げ、 その後我々の車に近づいてくることはなかった。 "信じれば失う" 僕はこの時、インドの僻地に暮らす貧しい子供達を信じ、 どこかで貰った安物のペンを一本、失ったに過ぎないが、 むしろ彼等のほうこそ、もっと大切な何かを失ったのではないか。 僕が彼等に対してひとこと言わせてもらうなら、こうだ。 "裏切るな。裏切れば、失う" インド旅行記のTOPへ
by deepblue-ryu
| 2007-04-03 15:59
| ■旅行記/旅行
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